本日のテーマは、「法改正」!
2023年度の弁理士試験で注意すべきは以下の改正法です。
● 特許法等の一部を改正する法律
(2021年5月21日公布)
● 著作権法の一部を改正する法律
(2021年6月2日公布)
どちらも2021年に公布されましたが、昨年度の弁理士試験以降に施行された規定がいくつかあるので、重要そうなところだけピックアップしてみました。
特許法等の改正
2021年5月21日に公布された「特許法等の一部を改正する法律(通称、令和3年法)」によって、以下の法律が改正されました。
- 特許法
- 実用新案法
- 意匠法
- 商標法
- 工業所有権特例法
- 国願法
- 弁理士法
多くの規定は既に施行されており、「2022年度弁理士試験の注意すべき法改正」として、記事をまとめています。
ですが、2022年度の弁理士試験以降に施行された規定の中にも重要なものがあるで、2023年度の弁理士試験で狙われそうなところを今回の記事でまとめてみました。
令和3年法の詳細については「産業財産権法の解説」をご参照ください(* .ˬ.))
それではいってみましょう♪
① 救済規定の緩和
- 施 行 日 :2023年4月1日
- 関 連 法 :特許、実用新案、意匠、商標
- 改正概要:手続き期間を徒過してしまった場合の救済規定を「正当な理由」から「故意でない」に緩和
- 改正理由:欧米諸国と比べて厳格過ぎる状況を改善するため
回復申請の容認率 | |
「正当な理由」を採用する国 | 90%以上 |
「故意でない」を採用する国 | 60%以上 |
日本 | 10~20%程度 |
特許法 36条の2
6 前項の規定により取り下げられたものとみなされた特許出願の出願人は、経済産業省令で定める期間内に限り、経済産業省令で定めるところにより、第二項に規定する外国語書面及び外国語要約書面の翻訳文を特許庁長官に提出することができる。ただし、故意に、第四項に規定する期間内に前項に規定する翻訳文を提出しなかつたと認められる場合は、この限りでない。
なお、経済産業省令で定める期間は、原則として、「手続きができるようになった日から2月以内」又は「期間の経過後1年以内」
正当な理由のときと同じ
改正箇所が多いのでその他の条文は省略させていただきます。
救済規定のポイントはこちらの記事をご参照ください。
② 国際商標登録出願
- 施 行 日 :2023年4月1日
- 関 連 法 :商標
- 改正概要:国際商標登録出願の「個別手数料」について、二段階納付(国際出願時と登録査定時の納付)から一括納付(国際出願時に全額納付)に変更することとなった。
- 改正理由:二段階納付を採用する国は締約国108か国のうち3か国のみであり、海外の出願人に対し、追加的な手続負担を与えているため。また、新型コロナの影響により国際郵便の引き受けが停止し、海外の出願人が不利益を受ける事態が生じた。
商標法 68条の30(国際登録に基づく商標権の個別手数料)
国際登録に基づく商標権の設定の登録を受けようとする者は、議定書第八条(7)(a)に規定する個別の手数料(以下「個別手数料」という。)として、一件ごとに、六千円を超えない範囲内で政令で定める額に一の区分につき四万七千九百円を超えない範囲内で政令で定める額を加えた額に相当する額を国際登録前に国際事務局に納付しなければならない。
あわせて、設定登録のタイミングに関する条文が改定されております。
商標法 68条の19 (商標権の設定の登録の特例)
国際商標登録出願についての第十八条第二項の規定の適用については、同項中「第四十条第一項の規定による登録料又は第四十一条の二第一項の規定により商標登録をすべき旨の査定若しくは審決の謄本の送達があつた日から三十日以内に納付すべき登録料の納付があつたときは」とあるのは、「商標登録をすべき旨の査定又は審決があつたときは」とする。
改正前は、「個別手数料の納付があったことを国際登録簿に記録した旨の通報が国際事務局からあったとき」
また、一括納付への変更と同時に、登録査定の方式の特例が新設されました。
商標法 68条の18の2(商標登録の査定の方式の特例)
国際商標登録出願についての第十七条において準用する特許法第五十二条第二項の規定の適用については、特許庁長官は、査定(第十六条の規定による商標登録をすべき旨の査定に限る。)に記載されている事項を、経済産業省令で定めるところにより、国際事務局を経由して国際登録の名義人に通知することをもつて、第十七条において準用する同項の規定による当該査定の謄本の送達に代えることができる。
2 前項の場合において、同項の規定による通知が国際登録簿に記録された時に、同項に規定する送達があつたものとみなす。
この規定により、国債登録簿への記録をもって「登録査定の謄本」の送達があったものとみなされます。
③ 模倣品流入の規制
- 施 行 日 :2022年10月1日
- 関 連 法 :意匠、商標
- 改正概要:海外の事業者から国内の個人に対し、模倣品を直接販売する行為が、意匠法・商標法上の「輸入」行為に含む旨が追加された。
- 改正理由:新型コロナによる生活様式の変化、電子商取引の発展、国際貨物に係る配送料金の低下等により、個人使用目的で模倣品が輸入されてしまうケースが急増しているため。
意匠法 2条(定義等)
一 意匠に係る物品の製造、使用、譲渡、貸渡し、輸出若しくは輸入(外国にある者が外国から日本国内に他人をして持ち込ませる行為を含む。以下同じ。)又は譲渡若しくは貸渡しの申出(譲渡又は貸渡しのための展示を含む。以下同じ。)をする行為
商標法 2条(定義等)
7 この法律において、輸入する行為には、外国にある者が外国から日本国内に他人をして持ち込ませる行為が含まれるものとする。
意匠法では「実施」、商標法であ「使用」の定義に、配送業者等の第三者を通じて国内に持ち込む行為が明記されました。
第三者を利用することなく、携行品として日本国内に持ち込む行為は、法改正以前から「輸入」に該当するものと解されていたとか。
著作権法の改正
つづいて、2021年6月2日に公布された「著作権の一部を改正する法律」
これによって、著作権法が改正されました。
変更点は大きく2点
- 図書館等の権利制限規定の見直し
- 放送番組のインターネット上での同時配信等に係る権利処理の円滑化
「2. 放送番組のインターネット上での…」については、2022年度の弁理士試験で注意すべき改定として記事で書かせていただきました。
2023年度の弁理士試験では、「1. 図書館等の権利制限規定の見直し」についても、出題される可能性が大いにありますので、概要をざっくりと紹介させていただきます。
① 絶版資料のWeb送信
- 施 行 日 :2022年5月1日
- 改正概要:国立国家図書館は「絶版等資料のデータ」を(図書館だけでなく)直接利用者に送信できるようになった。
- 改正理由:新型コロナによる図書館の休館、病気等により図書館へ足を運べないことを考慮
出典:著作権法の一部を改正する法律(概要)より抜粋 | 文部科学省のWebサイト
31条 (図書館等における複製等)
4 国立国会図書館は、次に掲げる要件を満たすときは、特定絶版等資料に係る著作物について、第2項の規定により記録媒体に記録された当該著作物の複製物を用いて、自動公衆送信(当該自動公衆送信を受信して行う当該著作物のデジタル方式の複製を防止し、又は抑止するための措置として文部科学省令で定める措置を講じて行うものに限る。以下この項及び次項において同じ。)を行うことができる。
一 当該自動公衆送信が、当該著作物をあらかじめ国立国会図書館にその氏名及び連絡先その他文部科学省令で定める情報を登録している者(次号において「事前登録者」という。)の用に供することを目的とするものであること。
二 当該自動公衆送信を受信しようとする者が当該自動公衆送信を受信する際に事前登録者であることを識別するための措置を講じていること。
31条 (図書館等における複製等)
5 前項の規定による自動公衆送信を受信した者は、次に掲げる行為を行うことができる。
一 自動公衆送信された当該著作物を自ら利用するために必要と認められる限度において複製すること。
二 次のイ又はロに掲げる場合の区分に応じ、当該イ又はロに定める要件に従つて、自動公衆送信された当該著作物を受信装置を用いて公に伝達すること。
イ 個人的に又は家庭内において当該著作物が閲覧される場合の表示の大きさと同等のものとして政令で定める大きさ以下の大きさで表示する場合 営利を目的とせず、かつ、当該著作物の伝達を受ける者から料金を受けずに行うこと。
ロ イに掲げる場合以外の場合 公共の用に供される施設であつて、国、地方公共団体又は一般社団法人若しくは一般財団法人その他の営利を目的としない法人が設置するもののうち、自動公衆送信された著作物の公の伝達を適正に行うために必要な法に関する知識を有する職員が置かれているものにおいて、営利を目的とせず、かつ、当該著作物の伝達を受ける者から料金を受けずに行うこと。
② 図書館資料のメール送信
- 施 行 日 :2023年6月1日(予定)
- 改正概要:調査研究目的であれば、権利者への補償金の支払うことで、著作物の一部をメール送信できるようになった
- 改正理由:調査研究目的であれば著作物の一部を複製・提供可能であったが、簡易・迅速な資料の提供が求められていた
出典:著作権法の一部を改正する法律(概要)より抜粋 | 文部科学省のWebサイト
31条(図書館等における複製等)
2 特定図書館等においては、その営利を目的としない事業として、当該特定図書館等の利用者(あらかじめ当該特定図書館等にその氏名及び連絡先その他文部科学省令で定める情報(次項第三号及び第八項第一号において「利用者情報」という。)を登録している者に限る。第四項及び第百四条の十の四第四項において同じ。)の求めに応じ、その調査研究の用に供するために、公表された著作物の一部分(国等の周知目的資料その他の著作物の全部の公衆送信が著作権者の利益を不当に害しないと認められる特別な事情があるものとして政令で定めるものにあつては、その全部)について、次に掲げる行為を行うことができる。ただし、当該著作物の種類(著作権者若しくはその許諾を得た者又は第七十九条の出版権の設定を受けた者若しくはその公衆送信許諾を得た者による当該著作物の公衆送信(放送又は有線放送を除き、自動公衆送信の場合にあつては送信可能化を含む。以下この条において同じ。)の実施状況を含む。第百四条の十の四第四項において同じ。)及び用途並びに当該特定図書館等が行う公衆送信の態様に照らし著作権者の利益を不当に害することとなる場合は、この限りでない。
一 図書館資料を用いて次号の公衆送信のために必要な複製を行うこと。
二 図書館資料の原本又は複製物を用いて公衆送信を行うこと(当該公衆送信を受信して作成された電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によつては認識することができない方式で作られる記録であつて、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。以下同じ。)による著作物の提供又は提示を防止し、又は抑止するための措置として文部科学省令で定める措置を講じて行うものに限る。)。
特定図書館の要件は以下
- 責任者の配置
- 研修の実施
- 利用者情報の適切な管理措置
- 送信データの流出防止措置
- その他、文科省で定める措置
(著作権法31条3項)
まとめ
本日は、2023年度の弁理士試験で注意すべき法改正についてまとめました。
● 特許法等の一部を改正する法律
(2021年5月21日公布)
- 手続き期間を徒過した場合の救済規定
⇒「正当な理由」⇒「故意でない」に緩和 - 国際意匠登録出願の手続き
⇒「二段階納付」⇒「一括納付」に変更
国債登録簿への記録をもって効力発生 - 模倣品流入の規制強化
⇒ 国内の個人に対する販売も規制対象
● 著作権法の一部を改正する法律
(2021年6月2日公布)
- 絶版等資料のWeb送信
⇒ 「国立国会図書館⇒図書館」に加えて、
「国立国会図書館⇒利用者」が可能に! - 図書館資料のメール送信
⇒ 調査研究目的なら、「複製物の提供」
に加えて「メール送信」が可能に!
以上です。
弁理士試験まであと一週間!
ラストスパート頑張りましょう୧( ˃◡˂ )୨
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