本日のテーマは実用新案法!
特許法との違いに着目しながら、ポイントになる規定をサラッと整理してみました。
実用新案法とは?
そもそも実用新案法とは、
物品の形状、構造又は組み合わせに係る『考案』の保護及び利用を図る法律です。
『発明』の保護及び利用を図る特許法との違いはざっくり以下の通り。
特許法 | 実用新案法 | |
---|---|---|
保護対象 | 発明 (広い) | 物品の形状構造 に係る考案 (狭い) |
出願から登録 までの期間 | 数年 | 数か月 |
出願から登録 までの費用 | 約15万 | 約5万 |
権利の信頼性 | 高い | 低い |
権利の 存続期間 | 出願から 20年 | 出願から 10年 |
権利化までに長~い時間と高額な費用を要する特許と比べて、短期間でお安く権利化できちゃう実用新案。
その特徴から、「ミニ特許」なんて呼ばれることもあるそうです。
実用新案登録出願
基礎的要件
実用新案は早期権利保護を図る観点から実体審査が行われません。
その一方で、特許庁長官により最低限の要件を満たしているかどうか(基礎的要件)の確認が行われます。
- 考案であるか
- 公序良俗違反はないか
- 請求の範囲の記載に方式違反はないか
- 単一性違反はないか
- 必要事項の記載漏れ、著しく不明確な記載はないか
6条の2(補正命令)
引用:実用新案法|e-Gov法令検索
特許庁長官は、実用新案登録出願が次の各号の一に該当するときは、相当の期間を指定して、願書に添付した明細書、実用新案登録請求の範囲又は図面について補正をすべきことを命ずることができる。
一 その実用新案登録出願に係る考案が物品の形状、構造又は組合せに係るものでないとき。
二 その実用新案登録出願に係る考案が第四条の規定により実用新案登録をすることができないものであるとき。
三 その実用新案登録出願が第五条第六項第四号又は前条に規定する要件を満たしていないとき。
四 その実用新案登録出願の願書に添付した明細書、実用新案登録請求の範囲若しくは図面に必要な事項が記載されておらず、又はその記載が著しく不明確であるとき。
出願の補正
特許法と同様、以下のとおりです
- 原則、特許庁に係属していれば補正可能
- 明細書、請求の範囲、図面、要約書は例外
ただし!
明細書、請求の範囲、図面、要約書の補正期間が特許法と異なる点に注意しましょう。
【特許法】
- 明請図:査定謄本の送達まで(例外あり)
- 要約書:出願から1年4月
【実用新案法】
- 明請図要:出願から1月
実用新案法 2条の2(手続の補正)
引用:実用新案法|e-Gov法令検索
実用新案登録出願、請求その他実用新案登録に関する手続(以下単に「手続」という。)をした者は、事件が特許庁に係属している場合に限り、その補正をすることができる。ただし、経済産業省令で定める期間を経過した後は、願書に添付した明細書、実用新案登録請求の範囲、図面若しくは要約書又は第八条第四項若しくは第十一条第一項において準用する特許法(昭和三十四年法律第百二十一号)第四十三条第一項(第十一条第一項において準用する同法第四十三条の二第二項(第十一条第一項において準用する同法第四十三条の三第三項において準用する場合を含む。)及び第四十三条の三第三項において準用する場合を含む。)に規定する書面について補正をすることができない。
経済産業省令で定める期間は「実用新案法施行規則の1条」で規定されています。
実用新案法施行規則 1条 (手続の補正の期間)
引用:実用新案法施行規則|e-Gov法令検索
実用新案法(昭和三十四年法律第百二十三号)第二条の二第一項ただし書の経済産業省令で定める期間は、実用新案登録出願の日(同法第十条第一項若しくは第二項又は同法第十一条第一項において準用する特許法(昭和三十四年法律第百二十一号)第四十四条第一項の規定による実用新案登録出願について、実用新案法第二条の二第一項ただし書の規定により同法第八条第四項に規定する書面又は同法第十一条第一項において準用する特許法第四十三条第一項(実用新案法第十一条第一項において準用する特許法第四十三条の二第二項(実用新案法第十一条第一項において準用する特許法第四十三条の三第三項において準用する場合を含む。)及び同法第四十三条の三第三項において準用する場合を含む。)に規定する書面について補正をする場合にあつてはその実用新案登録出願の日、実用新案法第四十八条の十六第四項の規定により実用新案登録出願とみなされた国際出願についての手続を補正する場合にあつては、同法第四十八条の十六第四項に規定する決定の日)から一月とする。
「分割」や「優先権主張」を伴う場合は、もとの出願日ではなく、実際の出願日から起算する点に注意!
補正の手続き
実用新案登録出願を補正するには、特許出願の補正と同じく「手続き補正書」を提出することになっています。
実用新案法 2条の2 (手続の補正)
引用:実用新案法|e-Gov法令検索
5 手続の補正(登録料及び手数料の納付を除く。)をするには、手続補正書を提出しなければならない。
ただし、外国語書面出願が存在しないため、「誤訳訂正書」がない点が異なります。
実用新案登録の訂正
続きまして、権利化後に行う「訂正」について
実用新案法では、以下2種類の訂正が存在します。
- 請求の範囲の減縮(14条1項)
- 請求項の削除(14条7項)
減縮を目的とする訂正(1項訂正)
1回に限り「明細書」、「請求の範囲」、「図面」の訂正を行うことができる。
ただし、以下の期間が経過したらすることができません。
- 最初の技術評価請求書の謄本送達から2月
- 無効審判について、最初に指定された期間
第十四条の二 (明細書、実用新案登録請求の範囲又は図面の訂正)
引用:実用新案法|e-Gov法令検索
実用新案権者は、次に掲げる場合を除き、願書に添付した明細書、実用新案登録請求の範囲又は図面の訂正を一回に限りすることができる。
一 第十三条第三項の規定による最初の実用新案技術評価書の謄本の送達があつた日から二月を経過したとき。
二 実用新案登録無効審判について、第三十九条第一項の規定により最初に指定された期間を経過したとき。
2 前項の訂正は、次に掲げる事項を目的とするものに限る。
一 実用新案登録請求の範囲の減縮
二 誤記の訂正
三 明瞭でない記載の釈明
四 他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること。
訂正の目的は特許法の訂正審判とほぼ同じです。
誤訳訂正がないだけ
削除を目的とする訂正(7項訂正)
請求項の削除であれば、回数制限なく行うことができる。
ただし、無効審判にて審理終結通知がなされた後は不可。
第十四条の二 (明細書、実用新案登録請求の範囲又は図面の訂正)
引用:実用新案法|e-Gov法令検索
7 実用新案権者は、第一項の訂正をする場合のほか、請求項の削除を目的とするものに限り、願書に添付した明細書、実用新案登録請求の範囲又は図面の訂正をすることができる。ただし、実用新案登録無効審判が特許庁に係属している場合において第四十一条において準用する特許法第百五十六条第一項の規定による通知があつた後(同条第三項の規定による審理の再開がされた場合にあつては、その後更に同条第一項の規定による通知があつた後)は、願書に添付した明細書、実用新案登録請求の範囲又は図面の訂正をすることができない。
訂正の手続き・効果
【手続き】
- 原則、権利消滅後であっても訂正できる
⇒ 無効審判で無効にされた場合は不可 - 「訂正書」を提出する
⇒ 1項訂正は訂正後の明細書等を添付 - 以下の承諾を要する
- 専用実施権者
- 質権者
- 共有者
第十四条の二 (明細書、実用新案登録請求の範囲又は図面の訂正)
引用:実用新案法|e-Gov法令検索
8 第一項及び前項の訂正は、実用新案権の消滅後においても、することができる。ただし、実用新案登録無効審判により無効にされた後は、この限りでない。
9 第一項又は第七項の訂正をするには、訂正書を提出しなければならない。
10 第一項の訂正をするときは、訂正書に訂正した明細書、実用新案登録請求の範囲又は図面を添付しなければならない。
13 特許法第百二十七条及び第百三十二条第三項の規定は、第一項及び第七項の場合に準用する。
【効果】
- 訂正後の内容で出願&登録のみなし規定
- 公報掲載内容は訂正の目的に応じて異なる
– 1項訂正:特許請求の範囲・図面
– 7項訂正:その旨
第十四条の二 (明細書、実用新案登録請求の範囲又は図面の訂正)
引用:実用新案法|e-Gov法令検索
11 第一項又は第七項の訂正があつたときは、その訂正後における明細書、実用新案登録請求の範囲又は図面により実用新案登録出願及び実用新案権の設定の登録がされたものとみなす。
12 第一項又は第七項の訂正があつたときは、第一項の訂正にあつては訂正した明細書及び実用新案登録請求の範囲に記載した事項並びに図面の内容を、第七項の訂正にあつてはその旨を、実用新案公報に掲載しなければならない。
1項/7項訂正の比較
範囲の減縮 (1項) | 請求項の削除 (7項) | |
---|---|---|
権利消滅後の訂正 (8項) | 可能 | 可能 |
訂正書の提出 (9項) | 必要 | 必要 |
請求の範囲・図面の添付 (10項) | 必要 | 不要 |
質権者の承諾 (13項) | 必要 | 必要 |
専用実施権者の承諾 (13項) | 必要 | 必要 |
共有者の承諾 (13項) | 必要 | 必要 |
訂正の遡及効 (11項) | あり | あり |
公報掲載の内容 (12項) | 訂正した 明細書等 | 削除の旨 |
権利行使
特許法との違いは大きく3点
- 「実用新案技術評価書」の提示義務
⇒ 29条の2 - 権利行使の責任が規定されている
⇒ 29条の3 - 侵害者の過失が推定されない
⇒ 特許法103条を準用せず
実用新案技術評価書
ポイントは以下の通りです!
- 何人も請求できる
- 技術評価の対象
– 3条1項3号(公知文献)
– 3条2項(文献等から見た進歩性)
– 3条の2(拡大先願)
– 7条1~3,6項(先願) - 評価請求に回数制限はない
- 請求項ごとに請求できる
- その旨が公報に掲載される
第十二条(実用新案技術評価の請求)
引用:実用新案法|e-Gov法令検索
実用新案登録出願又は実用新案登録については、何人も、特許庁長官に、その実用新案登録出願に係る考案又は登録実用新案に関する技術的な評価であつて、第三条第一項第三号及び第二項(同号に掲げる考案に係るものに限る。)、第三条の二並びに第七条第一項から第三項まで及び第六項の規定に係るもの(以下「実用新案技術評価」という。)を請求することができる。この場合において、二以上の請求項に係る実用新案登録出願又は実用新案登録については、請求項ごとに請求することができる。
【技術評価の請求で生じる制限】
● 実用新案登録に基づく特許出願
⇒ 最初の通知から30日以内
出願人 or 実用新案権者による評価請求だと×
● 減縮を目的とする訂正(1項訂正)
⇒ 最初の謄本送達から2月以内
以上!
実用新案法のまとめでした。
Comment
Ataru 様
お久しぶりです、スマです。
弁理士試験の情報や、学習ポイントをまとめて頂いていて
とても参考になります。
といっても、基礎知識がまだまだ不足してるので、
受験は来年する予定でいます。
STUDYing 1周はしましたが、ぜんぜん身に付いた感がないです^^;
今後、過去問を通じて身に付けていけたらと思っています。
Ataru さんの試験合格を祈っております!
スマさん^^コメントありがとうございます!!そして、わかりやすといっていただきとても嬉しいですヾ(≧▽≦)ノ♪♪
勉強不足を感じる気持ちとてもよくわかります。ボクは2018年12月頃から本格的に弁理士の勉強を始めて、2019年度と2020年度の試験を受けてません…^^;
STUDYing「3周目」を終えていざ挑戦した2021年度は37/60点。合格点まで後2点という結果でした。
(ボクも一次試験を合格できていないので偉そうなことを言えませんが…TT)一つ一つの動画を隅々まで暗記する必要はなく、全体的な流れを理解できたら、早めに「短答解法講座」や「過去問集」を中心とした学習に切り替えた方が良いかと思います。
お互い頑張りましょう♪