生命科学の「最後のフロンティア」

思い出

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地球の誕生は46億年前、生物の誕生は35億年前、人類の誕生は0.002億年前

人類はその一瞬の歴史であっという間に生息地を広げ、光の届かない真っ暗な深海が「地球最後のフロンティア」と呼ばれています。

 

 

生命科学の分野にも「最後のフロンティア」と呼ばれる領域が存在します。

 

それは「脳・神経領域」

 

学生時代の研究テーマとしてこの「最後のフロンティア」に挑戦させてもらったボクから、この領域における基礎研究の面白さをお話ししたいと思います!

Ataru
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読み易さを重視して、ざっくりお話します。

脳の基礎知識

人の脳をざっくり分類すると以下の通り、3つの部位に分けられます。

  • 大脳
  • 小脳
  • 脳幹

 

「小脳」は、運動の記憶と関係しています。

Ataru
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「水の泳ぎ方」、「自転車の乗り方」など、体で覚えるタイプの記憶は小脳に蓄えられているということですね。

 

「脳幹」は、心臓の拍動・体温調節など、生命維持活動の中枢を担っています。

Ataru
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脳幹の損傷は致命傷となります

 

そして「大脳」は感情に関する機能を担っています。

 

大脳について、もっと詳しく

さらに、大脳は二つに分類することができます。

  • 大脳新皮質
  • 大脳辺縁系(旧皮質)

 

「大脳新皮質」は、高度な感情と関わっています。

Ataru
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「かわいそう」、「恥ずかしい」

 

 

 

 

 

 

「大脳辺縁系」は、原始的な感情と関わっています。

Ataru
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「快感」、「不快」、「恐怖」

 

人は、高度な感情と関わる「大脳新皮質」がとても発達しています。

 

大脳新皮質の構造

大脳の一番外側、表面を覆う皮質状組織。厚さ約2mmの6層構造です。

  • 第 I 層: 分子層
  • 第 II層: 外顆粒層
  • 第III層: 外錐体細胞層
  • 第IV層: 内顆粒
  • 第 V層: 内錐体細胞層
  • 第VI層: 多型細胞層
Ataru
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一番外側(表面)が第I層、一番内側が第VI層です。VI層の内側には「大脳辺縁系」が続きます。

大脳皮質第V層には、錐体細胞と呼ばれる特徴的な形をした大きな神経細胞が集まっています。
大脳新皮質について調べる際は、(変化がわかりやすいから)この錐体細胞に注目することが多いです。

神経科学の偉大な発見

生命科学の分野では、特定の組織や細胞などに特殊な色素を用いて色を付ける実験技術が重宝されています。

例えば、「ヘマトキシリン」を用いることで細胞核が青紫、「エオシン」を用いることで細胞質が赤色に染まります。

この二種類を組み合わせた「ヘマトキシリン・エオシン染色」は病理診断で最も一般的な染色法として知られています。

Ataru
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染色を用いらなくても、形態の違いで細胞核を見分けることは可能ですが、あらかじめ細胞質や核を染色すれば観察が容易になります!

 

ということで、神経について調べるためには神経組織の染色法が重要なのです。

 

しかーし!

神経組織の染色は大変難しく、懸賞金がかけられていたという噂もあるほど…ヽ(;▽;)ノ

 

 

その染色法見つかったのは1873年

イタリアの医師、カミッロ・ゴルジさんによって確立されました。

 

その名にちなんで、「ゴルジ染色」と呼ばれています。

ゴルジ染色の凄いところ

一説によると、ヒトの脳は約1,000億個の神経細胞で構成されています。

 

ゴルジ染色の特徴は、その中のごく一部の神経細胞をランダムに染色します。

この「ごく一部を染める」という特徴により、神経細胞の微細構造を調べる上で重宝されました。

Ataru
Ataru

全ての神経細胞を塗りつぶしてしまうと真っ黒になってしまいますからね。

 

今では常識とされているニューロン説

神経系はニューロンという非連続の単位から構成され、個々のニューロンは細胞体、樹状突起、軸索という極性のある構造を有し、シナプスと呼ばれる接合部によって互いに連絡する

ゴルジ染色は神経系の構造に関する数々の新事実の発見に利用されました。

 

そういった経緯もあり、1906年、ゴルジさんは、現代神経科学の父サンティアゴ・ラモン・イ・カハールさんとともに「ノーベル医学・生理学賞」を受賞しています。

 

余談ですが、ゴルジさんは細胞小器官の一つ「ゴルジ帯」の発見者でもあります。

ゴルジ染色よりもこちらの方が有名かもしれませんね(^^♪

ゴルジ染色の実験法

学生時代、ボクはこのゴルジ染色を使って、遺伝子Xの機能を調べました。

Ataru
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「普通のマウス」と「遺伝子Xノックアウトマウス」の大脳新皮質を比較して、遺伝子Xが大脳新皮質の発生にどのような役割を担っているか調べるというものです。

 

実験手順はざっくり以下の通り。

① マウスから脳を取り出して、ゴルジ染色の標本を作る
② 標本ができたら顕微鏡で観察しながら、ひたすらスケッチ

 

え!?スケッチ!?Σ(゚Д゚)

 

はい。

 

低倍率 大脳新皮質(第I層~第VI層)

高倍率 第V層(錐体細胞)

 

神経細胞は立体構造なので、写真(左)だとピントが合わずぼんやりしてしまいます。

一方、スケッチ(右)なら神経細胞の形態をはっきりと確認することができます!

 

ちなみに、野生型マウス(左)と遺伝子Xノックアウトマウス(右)の比較は以下の通り。

高倍率 第V層(錐体細胞)

遺伝子Xノックアウトマウスの神経細胞は基底樹状突起(細胞体から下側に伸びたヒョロヒョロ)が短いので、遺伝子Xの役割として基底樹状突起の発生に関与しているのかもしれませんね。

Ataru
Ataru

「違いがありそう!」と感触を掴んだら、定量化(遺伝子Xの場合は基底樹状突起の数や長さを数値化)して、統計学で証明します。

ゴルジ染色の今

ゴルジ染色が考案されてからまもなく150年が過ぎ去ろうとしていますが、現在においても、神経領域の研究で用いられています

…が、GFPの誕生によって存在感が薄れつつあるのも事実です。

Ataru
Ataru

たしかに、スケッチを証拠にされても、現代人の感覚からすると信憑性に欠けるか…

しかも、神経細胞がランダムに染色される理由は、未だによくわかっていないのです(^^;;

 

それでも、(ゴルジ染色の経験者としては…)ゴルジ染色の有用性はまだまだあるように感じています!

先程のスケッチを見ると、ノックアウトマウスにどんな変化が生じているのか、ぱっと見でわかるように錯覚してしまうかもしれません。

実際のところは、様々な神経細胞が混在しているので、どんな変化が起きているのかを見つけるまでに膨大な時間を要します。

 

GFPだと蛍光褪色してしまうので、長時間の観察に適していません。

一方、ゴルジ染色であれば、いくらでも観察できます。

Ataru
Ataru

スケッチを描きながら、ノックアウトマウスにどんな変化が生じているのかをじっっくり眺めることができるのです!

 

おまけ

記憶の本質って、どんなイメージを持っていますか?

ボクは子供の頃、「脳細胞の数=記憶」と考えていました。

Ataru
Ataru

記憶が増えるとそれにその分だけ脳細胞の数が増えるってことかな??

 

ですが…

 

現在の常識では、「子供」も「大人」も脳細胞の数はあまり変わらないとされています。

Ataru
Ataru

うそーーー!

「記憶の量=脳細胞」の数ではなさそうです…

記憶の本質は?

じゃあ、記憶の本質ってなんなの??

 

現在の仮説では…「神経回路の変化」とされています!

 

記憶が増えると神経回路の活性化と不活性化の組み合わせが変化することが報告されています。

Ataru
Ataru

0と1でデータを記憶しているPCと同じイメージですかね?

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