【2023年ノーベル医学・生理学賞】RNAワクチンについて、ざっくりまとめてみた

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2023年度ノーベル医学・生理学賞!

RNAワクチンの開発に関する貢献を称して、ペンシルベニア大学のカタリン・カリコさんとドリュー・ワイスマンさんの二名が受賞しました。

 

RNAワクチンといえば、コロナ禍で大活躍したファイザーとモデルナの新型コロナワクチン

 

何度も耳にしてきましたが、そもそも…

  • 従来のワクチンと何が違うのか?
  • どんなところが凄いのか?
  • どんな課題があるのか?

 

できる限りわかりやすくまとめてみました。

 

ワクチンの歴史

最古のワクチン

ワクチンが誕生したのは今から200年ほど昔(1700年代後半)

 

当時は「天然痘」という恐ろし病が存在しました。

 

致死率は20~50%

それだけでも十分なインパクトがあるのに、顔を含む全身に醜い痘跡が残り、見た目を著しく損ねてしまうことで恐れられていました。

  

 

どうすれば天然痘の恐怖から逃れることができるのでしょうか?

 

突破口となったきっかけは、

「毒性の低い牛の天然痘(牛痘)に感染した者は天然痘に感染しない」

という言い伝え。

 

イギリスの医師エドワード・ジェンナーは、牛痘にあえて感染させる「種痘法」の有用性を証明し、それを広めました。

 

これが史上初のワクチンといわれています。

 

人工的なワクチン

史上初のワクチンが誕生したきっかけは、偶然にも「牛痘」という天然痘によく似た毒性の低い病原体の存在があったからこそです。

このような偶然は、そうそう起こりえません。

 

ワクチンを人工的に作り出せるようになったのは、それから100年後(1800年代後半)

フランスの生化学者ルイ・パスツールは、病原体を何代も何代も培養を続けることで弱毒化することを発見します。

 

これによって、狙った病原体に対するワクチンを作り出せるようになりました。

 

病原体の弱毒化で作られたワクチンを「生ワクチン」といい、はしかや水ぼうそうなどのワクチンとして、現代でも使われています。

 

不活化ワクチンの誕生

現代で使用されているワクチンにはもう一種類あります。

 

それは不活化ワクチン

弱毒化ではなく死んだ病原体を使ったワクチンです。

 

生ワクチンと比べて、効果が弱く長続きしないとされる一方で、副反応のリスクが小さい安全性の高いワクチンといわれています。

 

毎年秋頃お世話になる「インフルエルザワクチン」などがこのタイプに該当します。

 

なぜ新しいワクチンが求められる?

ワクチンの誕生もあって、人類は病原体の恐怖から解放されつつあります。

日本においても、死亡原因ランキング上位から感染症の姿が消えて、がんや生活習慣病を残すのみとなりました。

【日本の死因順位】

1950年2022年
一位結核腫瘍
二位脳血管疾患心疾患
三位肺炎老衰

 

それではなぜ、RNAワクチンという新たなワクチンを開発する必要性があったのか

 

RNAワクチンの重要性を理解するためには、

「パンデミック」の恐ろしさを理解する必要があります。

  

パンデミックの恐怖

パンデミックは、『新しい病原体による感染症の世界的な大流行』の意味で広く用いられています。

 

これは季節性インフルエンザの大流行とは全く意味合いが異なり、健康な大人でも致命傷となる可能性が大いに考えられます。

 

なぜ新しい病原体だと危険なのかは、以下の通り。

 

理由1 病原体の毒性が高い!

病原体が根強く繁栄していくためには、宿主に対する毒性の低さがアドバンテージとなるため、時間の経過とともに毒性の低いものへと入れ替わっていきます。

これによって、ポピュラーな感染症は毒性が低いものが多い一方で、新しい病原体は毒性が高い可能性が考えられます。

ぺぎんとん
ぺぎんとん

宿主に良い影響を与える「ビフィズス菌」は勝ち組?

 

理由2 免疫がない!

人を含めた生物は、一度病原体に感染すると免疫が備わります。

しかし、新しい病原体に対する免疫がないため、重症化のリスクが大きいとされています。

 

理由3 薬もない!

あたりまえですが、新しい病原体に対する薬も存在しません。

何も治療することもできず、ただただ回復を祈るしかありません。

 

史上最悪のパンデミック

人類史上最悪のパンデミックは、14世紀のヨーロッパを襲ったペスト

手足の壊死を起こし全身が黒い痣だらけになって死亡するため、黒死病と呼ばれました。

このパンデミックによって、ヨーロッパ全体の人口のうち、1/4が死亡したとも言われています。

 

ワクチンの問題点

この恐ろしいパンデミックは現代でも起こりうる災害

もしパンデミックが発生したら、一刻も早くワクチンを開発したいところですが、そこには大きな問題が立ちはだかります。

 

それは、開発までにあまりにも長い時間がかかってしまうこと。

その期間、なんと10年!!!

 

世界中へのアクセスが容易となった今日

突然生じた「恐怖の殺人病原体」が世界中に広がり、おびただしい数の犠牲者が出てしまう可能性が、研究者の間で危惧されているのです。

 

RNAワクチン

それではここから本題。

RNAワクチンについてお話しに入ります!

 

そもそもRNAとは?

RNAの正式名称は、

Ribonucleic Acid(リボ核酸)

 

mRNA(メッセンジャーRNA)やtRNA(トランスファーRNA)といった具合に、様々なRNAが存在しますが、RNAワクチンは「mRNA」を利用したワクチンになります。

ぺぎんとん
ぺぎんとん

「RNAワクチン」と「mRANワクチン」は同じもの。

 

mRNAは大変ありふれた物質で、生物の遺伝情報からタンパク質を作り出す際に情報を仲介する設計図のような役割を果たしています。

 

例えば、

人はご飯を食べると血液中の糖が増えます。

すると、腎臓にある細胞の遺伝情報から、インスリンの設計図(mRNA)が作られます。

この設計図を基にインスリンが合成され血中の糖を減少させることができるのです。

 

なお、遺伝情報からタンパク質を作り出すためには必ず設計図(mRNA)が作られます。

遺伝情報 ⇒ mRNA ⇒ タンパク質

この流れは絶対的なものとされています。

 

RNAワクチンの仕組み

RNAワクチンを構成する「mRNA」が遺伝情報を仲介する設計図のようなものであることはご理解いただけたかと思います。

 

それではRNAワクチンとは何か???

 

標的となる病原体の設計図(mRNA)を注入して、体の中で病原体の死骸を合成させるものです。

 

不活化ワクチンは病原体の死骸を注射するもの

これに対して、

RNAワクチンは病原体の死骸の設計図を注射するもの

 

ただそれだけの違いです。

 

ぺぎんとん
ぺぎんとん

一応補足。

mRNA=設計図とはいっても大変壊れやすい物質なので、病原体の死骸が無尽蔵に作られ続けることはありません。

 

何が優れているの?

RNAワクチンの最大の長所は、新しい病原体に対する開発スピードが格段に優れていることです。

 

従来のワクチンを開発するには約10年という非常に長い時間を費やす必要があると言われていましたが、RNAワクチンをベースとした新型コロナワクチンはたった1年で開発することに成功しました。

ぺぎんとん
ぺぎんとん

非常事態であったことも理由の一つかもしれないけど、それでも歴史的快挙

 

さらに、RNAワクチンの本領が発揮されるのはこれからだったりします。

 

なぜなら、新たな病原体のRNAワクチンを開発するにしても、設計図の中身を書き換えるだけ

同じプロセスで新たなワクチンを製造できるので、一度RNAワクチンの有効性と安全性が認められれば、次回以降の開発では、さらなる効率化が期待されています。

 

パンデミックで新たな病原体が大流行しても、

突然変異で体の形をコロコロ変化させても、

設計図を柔軟に書き換えて、新しいワクチンをスピーディに開発できるということです。

 

他にも、製造プロセスの中で病原体が流失してしまうリスクがないことも注目されています。

 

RNAワクチンの課題

新型コロナに対するRNAワクチンが実用化されたといっても、今後解消していかなければならない課題が残されています。

 

一言でいえば、mRNAが非常に分解されやすいということ。

 

新型コロナワクチンでは、保管時に分解されてしまうことを防止するため超低温下での保管を要しました。

これによって、専用のフリーザーを搬入する必要があったり、輸送の取り扱いが特殊だったり、温度管理の問題で大量廃棄する必要があったりと、様々なトラブルを引き起こしました…

 

また、体内ですぐに分解されてしまうこと防ぐために「PEG化脂質ナノ粒子」という画期的な技術が開発されたのですが、、、

これがRNAワクチン特有の強い副作用の原因となっているようです。

ぺぎんとん
ぺぎんとん

予防接種で高熱がでてもね…

(緊急時だったから仕方なかったけど)

 

もっと詳しく!

以上、RNAワクチンについてはざっくりとまとめさせて頂きました。

ここから先は、今回ノーベル賞を受賞したお二人がどういった貢献をしたのかについて、まとめたいと思います。

 

受賞理由

新型コロナワクチンの開発において重要な役割を果たしたヌクレオシド塩基修飾に関する発見とされています。

 

1990年代にRNAワクチンが提唱された当初は、mRNAを注射しても、免疫機能ですぐに排除されてしまうことが課題となっていました。

 

この突破口を切り開いたのが、カリコさんと、ワイスマンさん!

二人は、外来のmRNAがすぐに排除される一方で、自己の細胞が死んだ時に漏れ出たmRNAについては、免疫機能で排除されないことに着目したところ、自身のmRNAにはある「目印」が付いていることを発見。

そして、外来のmRNAの一部を置換すると、免疫機能を回避できることを論文で発表しました。

ノーベル賞のきっかけとなる論文はこちら!

 

このように、免疫機能を回避するために手を加えたmRNAを「ヌクレオシド修飾mRNA(modRNA)」といいます。

 

この発見がRNAワクチンの実用化に大きく貢献したと判断されました。

 

まとめ

[RNAワクチンの概要]

  • RNAワクチンはmRNAという設計図を使ったワクチン
  • 体の中で不活化ワクチンを作らせるイメージ
  • 設計図を書き換えるだけで、新しいワクチンをスピーディーに開発できる
  • 安定性の低さが課題となっている

 

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