本日のテーマは著作権法。
「著作権の制限」と「罰則」に関する規定を中心にサラッと整理してみました。
正しさよりもわかりやすさを重視しているので、もし記憶が薄れている箇所があれば、条文に立ち返ってのご確認をお願いします┏○ペコッ
著作権法の基本
◆ 著作権法の目的
1条
著作物、実演、レコード、放送、有線放送に関し著作者の権利及びこれに隣接する権利を定め、これらの文化的所産の公正な利用に留意しつつ、著作者等の権利の保護を図り、もつて文化の発展に寄与すること
◆ 著作物の定義
2条1項1号
思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものをいう。
◆ 編集の著作物
12条
データベース以外の編集物で、その素材の選択又は配列によつて創作性を有するもの
◆ データベースの著作物
12条の2
データベースで、その情報の選択又は体系的な構成によつて創作性を有するもの
◆ 権利目的とならない著作物
13条
① 憲法、その他の法令
② 国等が発する告示、訓令、通達など
③ 裁判所の判決、決定、命令、審判
④ 行政庁の裁決・決定
⑤ ③&④の翻訳物、編集物
法人著作
◆ 法人著作の要件
15条1項
① 法人等の発意に基づく
② 法人等の業務に従事する者が作成
③ 職務上作成する著作物である
④ 法人等が自己の著作の名義の下に公表
⑤ 契約・勤務規則等に別段の定めがない
プログラムの著作物は④不要
(15条2項)
◆ 映画著作の権利帰属
29条1項
映画著作の著作者が、当該映画の製作に参加することを約束しているときは、その著作権は映画製作に帰属する
ちなみに、、、映画の著作者は、「制作、監督、演出、撮影、美術等を担当してその映画の著作物の全体的形成に創作的に寄与した者」と定義されています(16条)
◆ 映画著作の権利帰属②
29条2項
放送・放送同時配信等のための技術的手段として製作する映画著作の著作権のうち、以下の権利は、当該放送事業者に帰属
① 著作物を放送する権利
② 有線放送、自動公衆送信を行う権利
③ 受信装置を用いて公に伝達する権利
③ 複製物を放送事業者に頒布する権利
有線放送授業者についても同様(29条3項)
著作者人格権
◆ 著作者人格権
著作者人格権とは具体的に以下の権利です。
① 公表権
② 氏名表示権
③ 同一性保持権
著作者人格権の制限
◆ 公表権の定義
4条
以下のいずれかに該当する場合、公表されたものとみなされる
① 著作物の発行
② 上演、演奏、上映、公衆送信等で公衆に提示
③ 送信可能化された場合
④ 二次的著作物の公表
⑤ 原作品の所有者が美術・写真の著作物を展示
◆ 公表の推定
18条2項
以下のいずれかに該当する場合は、公表の同意があったものと推定される
① 著作権の譲渡
② 美術・写真の原作品を譲渡
③ 映画著作の著作権が映画製作者に帰属
◆ 氏名表示権の制限
19条3項
以下の要件を満たす場合は、著作者表示を省略できる
① 利益を害するおそれがない
② 公正な慣行に反しない
実演家人格権はいずれか一方を満たせば省略可能!
◆ 同一性保持権の制限
20条2項
以下のいずれかに該当する場合は、同一性保持権を適用しない
① 学校教育の目的上やむを得ないもの
② 建築物の増設、改築、修繕、模様替え
③ プログラム著作を効果的に実行するため
④ その他、やむを得ない改変
実演家人格権は「やむを得ない改変」又は「公正な慣行に反しない改変」であれば適用しない!(90条の3第2項)
著作権
◆ 著作権
著作権とは具体的に以下の権利です。
① 複製権
② 上演権・演奏権
③ 上映権
④ 公衆送信権
⑤ 口述権
⑥ 展示権
⑦ 頒布権
⑧ 譲渡権
⑨ 貸与権
⑩ 翻訳権・翻案権
⑪ 二次的著作物の利用に関する権利
著作権の制限
続きまして著作権の制限!
…ですが、あまりもにも数が多いので、以下の分類にまとめてみました。
上から順番にサラッと紹介します。
非営利目的の利用(5)
◆ 私的使用のための複製
30条1項
以下を除いて、私的使用のための複製は、複製権の侵害とはならない。
① 公衆の使用に供する自動複製機器による複製
② 技術的保護手段を回避した複製
③ 違法と知りながら録音・録画をDL
④ 違法と知りながら複製(録音・録画以外)
◆ 非営利目的の上演等
38条1項
以下の条件を満たす場合は、公表された著作物の上演・演奏・上映・口述ができる
① 営利目的でない
② 聴衆・観客から料金を受けない
③ 実演家への報酬が支払われない
◆ 難視聴地域の自動公衆送信
38条2項
以下の条件を満たす場合は、放送・有線放送される著作物を受信装置で自動公衆送信できる
① 営利を目的としない
② 聴衆・観衆から料金を受けない
◆ 非営利目的の伝達
38条3項
以下の条件を満たす場合は、放送・有線放送される著作物を公衆に視聴させることができる
① 営利を目的としない
② 聴衆・観衆から料金を受けない
家庭用受信機の場合は、営利目的でもok
◆ 非営利目的の貸与
38条4項
以下の条件を満たす場合は、公開された著作物(映画以外)を公衆に貸与できる
① 営利を目的としない
② 聴衆・観衆から料金を受けない
映画の著作物の場合は、以下についても満たせば貸与可能
① 政令で定める視聴覚教育施設等
② 相当な額の補償金を支払う
やむを得ない利用(5)
◆ 不随対象著作物の利用
30条の2
以下の要件を満たす場合は、著作物を利用できる。
① 複製伝達行為
② 正当な範囲内である
③ 軽微な構成部分となる著作物である
④ 著作権者の利益を不当に害しない
令和2年の法改正により、「写真・録音・録画」から「複製・伝達行為全般(スクショ、生配信・CG化)」に拡大された点に注意
◆ 検討過程における利用
30条の3
以下の条件を満たす場合は著作物を利用できる
① 著作者物の利用を検討している
② 検討過程の利用に供することを目的とする
③ 必要な限度内である
④ 著作者の利益を不当に害しない
◆ 思想感情を享受しない利用
30条の4
以下のいずれかに該当する場合は、著作物を利用できる
① 利用に係る技術開発・実用化のための試験
② 情報解析の用に供する場合
③ 知覚による認識を伴わない利用
◆ 裁判手続き等での複製
42条
裁判手続き、立法・行政目的上の内部資料として必要な場合は、複製権の侵害とはならない。
◆ 放送事業者の一時固定
44条
放送事業者は、著作権の放送等の許諾を得ていれば、放送等のために一時的に録音、録画することができる
有線放送事業者、放送同時配信等事業者についても同様。
報道における利用(4)
◆ 公表された著作物の引用
32条1項
以下の条件を満たす場合は著作物を利用できる
① 公表された著作物である
② 公正な慣行に合致する
③ 報道、批評、研究など正当な範囲内である
国等の周知目的資料は、転載禁止があったらダメ
◆ 論説の転載・放送等
39条
以下の条件を満たす場合は、新聞又は雑誌に掲載された論説を転載し、放送し、有線放送し、地域限定特定入力型自動公衆送信を行い、放送同時配信等を行うことができる
① 経済上・社会上の時事問題である
② 学術的な性質を有しない
③ 利用を禁止する旨の表示がない
◆ 政治上の演説等の利用
40条
公開して行われた政治上の演説・裁判手続きはいずれの方法によるかを問わず利用できる
国会等の公開演説は(正当と認められる範囲に限り)新聞への転載、放送等が可能
◆ 時事の事件報道の利用
41条
以下の条件を満たす場合は、その事件を構成する著作物や、その事件の過程においてみられる著作物を複製し、報道に伴って利用することができる
① 事件の過程で著作物が見聞される
② 報道の目的上正当な範囲内
美術著作の利用(4)
◆ 原作品の著作者による展示
45条
以下の条件を満たす場合は、展示権にかかわらず著作物の原作品を公に展示できる
① 美術・写真の著作物である
② 原作品の所有である
屋外に恒常的設置はダメ
◆ 公開の美術の利用
46条
以下を除いて、屋外に恒常設置されている美術・建築の著作物は自由に利用できる。
① 彫刻を増製/増製したものを譲渡
② 建築物を複製/複製したものを譲渡
③ 屋外に恒常設置するために複製
④ 販売を目的とした複製/複製したものを販売
◆ 展示作品紹介のための利用
47条
以下の条件を満たす場合は、著作物の複製・上映・自動公衆送信ができる
① 原作品展示者である
② 展示する著作物の解説・紹介を目的
③ 必要と認められる限度
④ 著作者の利益を不当に害しない
これに加えて、展示著作物の所在に関する情報を複製&公衆送信できる
◆ 取引のための商品画像
47条の2
以下の条件を満たす場合は、著作物の複製・自動公衆送信ができる
① 美術・写真の所有者 or 委託を受けた者
② 原作品or複製物の譲渡・貸与目的
プログラム著作(4)
◆ 実行するために必要な限度
47条の3
以下の条件を満たす場合は、プログラム著作を複製できる
① 自ら実行するために必要な限度
③ 滅失以外の事情で所有権を失った者でない
◆ 円滑に行うための付随利用
47条の4第1項
電子計算機における利用を円滑・効率的に行うための付随的な利用(メモリやHDでの蓄積)であれば、プログラムの著作物を利用できる
内容を深く理解できない…
プログラムの規定は難しい
◆ バックアップの作成
47条の4第2項
以下の条件を満たす場合は、プログラムの著作物を利用できる(機種交換のためのデータ抽出・バックアップの作成)
① 著作者の利益を不当に害しない
② 以下のいずれか
- 利用ができる状態の維持を目的
- 回復することを目的
◆ 所在検索等での軽微利用
47条の5第
以下の条件を満たす場合は、書籍検索サービス・情報解析サービスを提供する者は、いずれかの方法によるかを問わず軽微利用できる
① 目的上必要と認められる限度
② 違法であることを知らなかった場合
③ 著作者の利益を不当に害しない
図書館による利用(4)
◆ 図書館等による複製
31条1項
以下の条件を満たす場合は、複製権の侵害とはならない。
① 政令で定める図書館
② 営利を目的としない事業である
③ 図書館等が所蔵している資料の複製
④ 以下のいずれか
- 調査研究目的の提供
- 図書館資料の保存のため
- 他の図書館へ入手困難資料の提供
◆ 調査研究目的のメール送信
31条2項
以下の条件を満たす場合は、著作物をメールなどで送信できる
① 特定図書館等である
② 調査研究の用に供するため必要な限度
③ 著作物が図書館資料である
④ 権利者へ補償金の支払い
特定図書館の要件は以下
- 責任者の配置
- 研修の実施
- 利用者情報の適切な管理措置
- 送信データの流出防止措置
- その他、文科省で定める措置
◆ 絶版等資料の電子化
31条6項
以下の条件を満たす場合は、絶版資料を電子媒体に記録することができる。
① 国立国会図書館である
② 以下のいずれか
- 原本に代えて公衆の利用に供する
- 自動公衆送信に用いる
◆ 絶版等資料の自動公衆送信
31条7項
以下の条件を満たす場合は、著作物を自動公衆送信できる
① 国立国会図書館である
② 公立図書館等で公衆への提示目的
③ 著作物が絶版等資料である
④ 営利を目的としない事業である
⑤ 以下のいずれか
- 利用者の求めに応じて複製物を提供
- 受信装置を用いて公に伝達
◆ オンライン資料の収集
43条
以下の条件を満たす場合は、国立国会図書館の使用に係る電磁的記録媒体にオンライン資料を記録できる
① 国立国会図書館の館長である
② 必要と認められる限度
学校教育目的の利用(6)
◆ 教科用図書への掲載
33条1項
以下の条件を満たす場合は、公表された著作物を教科用図書に掲載できる
① 学校教育の目的上必要な限度
② 著作者への通知
③ 著作権者に補償金の支払い
◆ デジタル教科書への掲載
33条の2
以下の条件を満たす場合は、著作物を教科用代替図書(デジタル教科書)に掲載できる
① 学校教育の目的上必要な限度
② 教科用図書に掲載された著作物
③ 教科用図書発行者への通知
④ 著作権者に補償金の支払い
◆ 教科用拡大図書での利用
33条の3
以下の条件を満たす場合は、著作物を教科用拡大図書(拡大図書・デジタル録音図書など)で利用できる
① 教科用図書の利用が困難な児童のため
② 教科用図書に掲載された著作物
③ 教科用図書発行者への通知
④ 著作権者に補償金の支払い
◆ 学校教育番組の放送
34条
以下の要件を満たす場合は、公表された著作物の放送、有線放送、地域限定特定入力型自動公衆送信、放送同時配信ができる
① 学校教育の目的上必要な限度
② 基準に準拠した学校向けの番組
② 著作者への通知
③ 著作権者に補償金の支払い
◆ 教育機関における複製等
35条
以下の要件を満たす場合は、公表された著作物の複製、公衆送信、伝達ができる
① 営利を目的としない教育機関
② 授業の過程における利用
③ 必要と認められる限度
④ 利益を不当に害しない
公衆送信(非同時)を行う場合は、著作権者に補償金を支払う
◆ 試験問題としての複製等
36条
以下の条件を満たす場合は、公表された著作物の複製し、公衆送信ができる
① 試験・検定の目的
② 必要と認められる限度
③ 著作権者に補償金の支払い(営利目的のみ)
福祉目的の利用(3)
◆ 視点字に訳した利用
37条1,2項
公表された著作物を点字に訳して複製し、公衆送信できる
◆ 視覚障害者のための複製等
37条
以下を満たす場合は、公表された著作物を必要な方式(音声に変換など)により複製し、公衆送信できる
① 政令で定めるもの
② 必要と認められる限度
③ 当該方式で公衆への提供・提示がない
◆ 聴覚障害者のための複製等
37条の2
以下を満たす場合は、公表された著作物を必要な方式(字幕を入れるなど)により複製し、公衆送信できる
① 政令で定めるもの
② 必要と認められる限度
③ 当該方式で公衆への提供・提示がない
罰則
最後に罰則を一覧表にサラッとまとめます!!
119条1項 懲役: 10年以下 罰金: 2000万以下 | ・著作権の侵害 (出版権、著作者隣接権を含む) |
119条2項 懲役: 5年以下 罰金: 500万以下 | ・著作者人格権の侵害 ・営利目的で自動複製機を使用させる ・国内頒布目的で侵害品の輸入・所持 ・リーチサイトのプラットフォーマー ・リーチアプリのプラットフォーマー ・業務上で侵害プログラムを使用 |
119条3項 懲役: 2年以下 罰金: 200万以下 | (違法であること知っていることが要件) ・録音録画有償著作を私的使用目的で 録音/録画 ・その他の有償著作を私的使用目的で 継続的 or 反復して複製 |
120条 罰金: 500万以下 | ・著作者死亡後の人格権侵害 |
120条の2 懲役: 3年以下 罰金: 300万以下 | ・技術的保護手段等の回避装置の提供 ・業として技術的保護手段等の回避提供 ・リーチサイト/リーチアプリの提供 ・不正なシリアルコードの提供 ・営利目的で権利管理情報に係る侵害 ・営利目的で商業用レコード輸入 |
以上、著作権法のまとめでした。
本当は著作隣接権についてもまとめたまとめたかったのですが、、、想像以上に時間を要してしまったので、更新の際に追加したいと思います。
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