サイエンス
と聞くと、皆さんは何を連想しますか?
(科学…?)
フツーはそう思うかもしれませんが、
理系の大学院を経験すると全く異なるものを連想するようになります。
それは、
科学ジャーナル『サイエンス』
この雑誌に論文がアクセプトされれば、研究者としての一生が約束される
とまで言われるほどの
超一流ジャーナル
(もしかしたら、とんでもない大発見をして、アクセプトされちゃうかも?!)
研究者を志す者であれば誰もが経験する
ただの妄想
例えるなら、
年末ジャンボで十億円を引き当てるような絶対にありえない妄想です。
そんな寝ぼけた妄想が現実となる
運命の瞬間
ボクは巡り合ってしまいました。
同じ研究室の先輩、
まだ博士課程の学生が、
『サイエンス』にアクセプトされた瞬間に⁉︎
今日は、そんな思い出話をしたいと思います。
研究者の評価指標
社会人の評価指標といえば、
「学歴」に「職歴」、、、そして「資格」
どんな大学を卒業したのか?
どんな仕事を経験したのか?
TOEICのスコアはどのくらいか?
だいたいこんなポイントが見られているのではないでしょうか?
一方、研究者の評価指標は何か?
それは、
どんなジャーナルに論文を投稿したか
一見遠いようで、
研究者は漫画家と近しい存在なのかもしれません。
「ジャンプ」や「マガジン」などの人気雑誌に連載が決まると注目されるように。
ジャーナルの良し悪し
一口にジャーナルといっても、ピンからキリまで、膨大な数が存在します。
「よくわからない大学なら行く意味がない」
と言われてしまうように
よくわからないジャーナルに投稿してもあまり意味がありません。
では、ジャーナルの良し悪しはどのように判断すれば良いのか?
ざっくりとした指標は以下の通り
- 査読(審査)があるか?
- 国際ジャーナルか?
- 歴史があるか?
でも、これだけでは良し悪しを正確に比較することができません…
そこで、
インパクトファクター
という指標が存在します。
これは引用された論文の数をスコアリングしたもので、大学の偏差値のようなもの
ボクが所属していたライフサイエンス分野では、
インパクトファクター「3.0」以上であれば、読む価値のある良質なジャーナルとされていて、
「3.0」以上のジャーナルにアクセプトされることが博士課程の飛級要件となっていました。
そんな中でも、
分野の垣根を越えて、研究に携わる者なら誰もが知っているビッグジャーナルがニ紙
- ネイチャー
- サイエンス
そのインパクトファクター
60.0~70.0
まるで神のよう存在として、崇められているのです。
先輩の話
長々と前置きをしてしまいましたが、
ここから本題
サイエンスにアクセプトされた先輩
「谷山さん(仮名)」のお話
ちょうど桜の舞う季節のこと
卒業研究に向けて配属された研究室で、
博士課程2年の彼と出会いました。
どんな人?
谷山さんの第一印象は、「趣味人」
(失礼ながら)イケメンとはいえない標準的な理系大学院生
そんな出で立ちとは裏腹に、多彩な趣味を持ち合わせていました。
バイク、登山、キャンプ、クラシックやJazzの音楽鑑賞…などなど
では、不真面目な学生だったのか?
というと全くそんなことはなく、
趣味以外の時間は研究に全力投球‼︎
研究室に寝袋を持ち込み、泊まり込みで実験に没頭していたほどでした。
要するに、
時間の無駄遣いを一切嫌う人
そして、お金の無駄遣いも大嫌い‼︎
浪費のコントロールはもちろん、食費を極限まで削るため、
必要な栄養分を算出し、「白米」と「豆腐」と「青汁」を組み合わせた黄金比を見出していました。
(顔色がちょっとおかしい気がするけど…)
面倒見のいい優しい先輩、
ちょっと変わった一面もある先輩
そんな印象が残っています。
アクセプトされた理由
なぜ彼はサイエンスにアクセプトされたのか?
世界中の研究者が長年探し求めた、
それでも手の届かなかった、
そんな、注目度の高い発見をしたからです。
ライフサイエンスの分野で注目度の高い発見といえば、
- 癌の治療法
- 再生医療
- アルツハイマーの治療法
- 脊髄損傷の治療法
- アンチエイジング
などなど。
世界中の多くの人たちが抱える未解決問題を前に進めるために、キーとなる発見
サイエンスほど有名なジャーナルとなると
研究者ではなく、フツーの人でも興味を惹かれるような発見である必要があるのです。
であれば、、、
…最初から注目度の高いものを探せばいのでは?
そう思うかもしれませんが、
注目度が高いということはたくさんのライバルが挑んできたのにも関わらず、未解決な問題
何も実績を得られないまま、長い年月を棒に振ってしまうかもしれない、大きなリスクを伴います。
世界中の研究者が群がる金山の中、
谷山さんは、見事に金塊を掴み取りました。
運命の瞬間
サイエンスにアクセプトされたのは、博士課程3年生の中頃。
とはいっても、
ターニングポイントは遡ること1年前にありました。
きっかけとなる発見と論文の執筆
そして、、、
サイエンスから”リバイス”の返答を受けます‼︎
リバイスとは、「直せ‼︎」
という意味ですが、
裏を返せば、
「直せば載せているよ」
という意味なのです。
そこから実験を重ねること『1年』の期間を経て、アクセプトに至ります。
先輩の話(その2)
学生でサイエンスのアクセプト
まるで絵に描いたような快挙を成し遂げた谷山先輩
さぞ人間離れした天才なんだろう
…と思いきや、
彼の人間性や努力を褒める人は多くとも、
研究者としての才能を称賛する声は、それほど多くありませんでした。。。
なぜ?
偉業を達成した彼がなぜ認められないのか?
大きな要因は、
彼が学生であるからだと思います。
実験のアプローチやら、論文の書き方やらなんやら、指導を受けている立場のため
個人の能力がどうのこうのというより、
「運」や「周りの環境」によるもの
つまり、重要な分子を引き当てた彼が天才だったわけではなく、
彼の指導者達のおかげ
というのが周りの見立てのようでした。
もちろん努力があってこそ、引き寄せることのできた結果ですが、
金塊を掘り当てたことは単なる運であって、掘る場所を考えたり、掘り方を教えた人達のおかげ
と見られてしまうようです。
研究者としての一生が約束されると言われるサイエンスですが、、、
ファーストオーサーとしてアクセプトされた彼の待遇を見る限り、そこまでの効力はない
そう感じてしまいました。
【ボクのオススメ】
最後に、
大学院進学を考える学生さん達へ
サイエンスは無謀かもしれませんが、どうすれば大学院の充実した時間を過ごせるのか、
ボクなりの考えをまとめておきます。
事前準備
学校の勉強を頑張ることも大切ですが、少しずつ論文に慣れておくことが重要。
論文は会社員でいうところの『新聞』のようなもので、
有名なものや、自分の研究に関するジャンルのものは、欠かさず目を通しておく必要があります。
大学院は修士で2年、博士で3-4年
研究室に所属してから論文を読もうとしても、それだけで時間の大部分を失ってしまいます。
だからこそ、研究室に所属する前に、準備を整えておく必要があります。
「じゃあ、今日からネイチャーとサイエンスを欠かさず読むぞー!」
というのも少々お待ちください。
大学院生が論文を読めるようになる理由は、
「読めないとマズイ:(;゙゚’ω゚’):」
という、追い詰められた状況があってこそ。
誘惑だらけの学部生が読もうとしても、あっという間に挫折してしまいます。
そもそも、英語で書かれていたり、詳細説明のない ネイチャーとサイエンスは初心者向けじゃない‼︎
そこで、
学部生へのオススメは、日経サイエンス!
月に1冊発行される雑誌で、
- 最新の研究を
- 日本語で
- しかも、わかりやすく
解説してくれる雑誌です!!!
英語の小難しい論文に飛びつきたくなってしまう気持ちもわかりますが、
まずは日本語で書かれたもので最新の情報をチェックする習慣をつけることが大切だと思います。
ネイチャーを読むにしても、natureasiaで日本語の要約を確認することをオススメ
研究室選び
今から振り返ると、
研究室選びは大きな分岐点
ちゃんと結果を出したいなら、結果を出せる研究室に所属しないといくら頑張っても意味がない
研究室のWebサイトで、誰が、どこのジャーナルに、どのくらいの頻度で投稿しているのかをチェックしておくことが大切だと思います。
その一方で、
ゆる〜い研究室に席だけ入れてもらって、就活に没頭することも一つの選択肢。
研究職以外に就きたいなら、論文の実績なんてほとんど考慮されませんから
要するに、
研究に没頭したいのか?
就活を頑張りたいのか?
目的を明確にすべきです!
中途半端に、研究も就活も頑張ろうとしてしまうと、
研究で何の結果も得られず、それであって就活も上手くいかないリスクが…
大切なこと
大学院で学んだ重要なことは、
有名ジャーナルに囚われてはいけない
ということ。
有名ジャーナルにアクセプトされたからといって、天才の証明にはなりません。
人生が激変することもありません。
自分が飛び込んだ分野の中で、自分がやるべき研究にコツコツ取り組んで、
そこそこ良質なジャーナルへコンスタントに投稿していくこと。
そんな、
アベレージヒッターが一番賢い選択肢
もし自分の進むべき道に、偶然、金塊が転がり出てきたのであれば、
そこで初めて、
ホームランを狙ってみればいいだけのことなんですよね。
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